
ウッドフォーラムで講演
写真提供 カナダウッド
2024年11月に私はアルバータ州森林公園省トッド・ローウェン大臣の率いるアルバータ州林産業貿易代表団に参加しました。団員はカナダウッド、アルバータ州林産品協会、ならびに同省やアルバータ州の林産品企業の面々でした。目的は、パートナーシップの強化、そしてアルバータ州が林産品供給者として信頼できることを示すことでした。
滞在10日間は、毎年恒例のカナダ木質ペレット協会(WPAC)の顧客謝恩夕食会、カナダウッドのウッドフォーラム、カナダ林産業審議会の50周年記念レセプション、記者会見、メディアによる取材インタビュー、日本政府とのミーティングなどが続き、またたくまに過ぎました。
日本は、石炭による公害軽減を目指す政府政策とバイオマスエネルギー向け長期固定価格買取制度(FIT)によって、世界で最も成長の速い木質ペレット輸入市場です。2050年までに温室効果ガス排出量をゼロにして、カーボンニュートラルな脱炭素社会の実現を日本は目指しており、2030年までの温室効果ガス削減目標を46%としています。日本にとって、カナダ産木質ペレットは目標達成のための方策のひとつなのです。
カナダこそ日本の気候変動目標の支援に適した国です。WPACは日本におけるBC産木質ペレットと石炭について温室効果ガス排出量を調査する「日加温室効果ガス(GHG)研究」Canada-Japan greenhouse gas (GHG) studyを最近実施しました。それによると、日本で木質ペレットを燃焼した場合は、石炭のGHG排出量のわずか8.37%しか温室効果ガスを排出しないことが分かりました(削減量91%以上)。
日本におけるカナダ産木質ペレットの伸び

カナダ産木質ペレットの対日輸出量は、2014年(6万2000トン)から2023年(170万トン)と、この10年間で27倍に伸びました。カナダ産木質ペレットの対日輸出量の30%はアルバータ州(70%はブリティッシュ・コロンビア州)からです。2023年には、アルバータ州から55万トン、総額1億7千万ドルの木質ペレットを日本に輸出し、同州の対日林産品輸出価額の3分の1となりました。
2023年には、日本の発電量のうち、再生可能バイオマスによる電力量(バイオマス発電所およそ240か所)が5%を超えました。バイオマスの電力構成における比率は、いまや、原子力に迫る勢いです。原子力は7%ですから、バイオマスは原子力と拮抗しつつあると言えます。
日本は現在年間610万トンの木質ペレットを消費しています。2024年10月31日を期末とする12か月で見ると、ベトナムが300万トンで50%のシェアとなっています。カナダは米国と共に市場シェア20%で2位であり、日本に230万トンずつ出荷しています。日本の木質ペレット消費量は2030年までに30%伸びると予想され、カナダ産木質ペレットにとって機会が拡大しています。
懸念対応は協調中心のカナダ方式

カナダ産木質ペレットが日本で低カーボンな代替品として伸びるにつれ、日本の顧客も規制当局も森林管理と木質ペレットにおいてカナダがどう評価されているかに関心を寄せ、バイオマスの原料調達と生産が責任を持って行われている確認を求めるようになっています。代表団は、カナダの定評のある持続可能な森林管理について、政府関係者と業界団体が足並みを揃えて発信を行いました。
ローウェン大臣は、木質ペレットをはじめとする日本との林産品貿易、そして長期にわたる通商関係の重要性を語りました。アルバータ州の森林管理に関する法規についても説明しました。
カナダウッドのブルース・セント・ジョン理事長は、カナダでは伐採を行う企業がカナダの多種多様な森林の管理、保護、モニタリングに注意深く対処していることを伝えました。
私は、カナダの木質ペレット産業が、伐採されてしまっている森林資源の活用向上のために存在していること、ペレットは基本的におがくずと製材所やパルプ工場では使えない低級丸太から製造されていることをお話しました。
今後の取り組み
2023年に、日本は英国を追い越してカナダの木質ペレット輸出先トップになりました。日本のペレット消費量は2030年までに30%伸びると予想されており、カナダのペレット製造業者にとってその重要性が大きくなるばかりです。今回の訪問中、私は、ローウェン大臣ならびにアルバータ州政府関係者、カナダウッドグループ、アルバータ林産品協会と共に、カナダの森林と木質ペレットの持続可能性を日本の政府と業界関係者に強く訴えました。今後も足繁く日本を訪問し、カナダ産木質ペレットの日本の電力構成における重要な地位の保全のために関係構築を図ってまいります。