日本における「カナダ産木質ペレットによるバイオマス発電」の留意点とその対応

以下から記事 

本記事は、広く多くの方々が「日本におけるカナダ産木質ペレットによるバイオマス発電」に対する留意点や実際の対応について一般的な理解を簡潔に得られるよう、わかりやすく、且つ網羅的に解説した記事です。 


1.木質バイオマス発電における留意点 

まず前提として、木質バイオマス発電そのものが「環境破壊」ではありません。 

木質バイオマス発電は再生可能エネルギーの一つとして位置づけられ、化石燃料の使用量を減らす選択肢になり得ます。 

特に製材の端材や林地残材、間伐材などの未利用材を有効活用できれば、資源循環にもつながります。 

国際的に木質バイオマスへの関心が高まる中で、特に注目されているのは、発電技術そのものよりも、原料となる木材の「調達のあり方」です。 

燃料が「どこから、どのように」調達されているのか、そして、そのプロセスが森林の健全性や生態系、地域社会の持続可能性とどのように調和しているのかという点において、より透明性の高い説明と厳格な管理体制が求められています。 


1-1.国際的な議論と持続可能性に関する論点 

木質バイオマスの利用拡大に伴い、その持続可能性をより確かなものにするための議論が国際的に行われています。 

主な論点としては、以下の4つが挙げられます。 

主な4つの論点 
「森林資源の持続可能な管理」:資源蓄積量と森林の再生力の維持 
「生物多様性と生態系の保全」:動植物の生息環境を守る適切な管理 
「炭素収支の検証」:輸送・加工等を含む全工程での評価 
「地域社会・先住民族への配慮」:権利の尊重と地域コミュニティとの共生 

上記のような多角的な視点から寄せられる疑問や期待に応えていくことは、日本の発電事業者にとっても、透明性の高い持続可能なサプライチェーンを構築する上で不可欠な要素となっています。 

特に、世界有数の木質ペレット輸出国であるカナダでは上記のような国際的な論点に対し、行政や企業が積極的に対応を進めており、「最新の森林保護施策」や「持続可能性を確保するための具体的な取り組み」が注目されています。 


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2.日本の木質バイオマス発電とカナダの密接な関係 

現在、日本はバイオマス発電の燃料として「木質ペレット」を世界的に見ても大規模に導入しており、その安定的な供給源としてカナダは重要な役割を担っています。  

カナダは世界有数の森林資源国であり、かつ厳格な森林管理制度が普及していることから、品質と持続可能性の両面で日本の主要なパートナーとなっています。 

そのため、カナダにおける森林管理のあり方は、日本のエネルギー供給の信頼性を支える重要な要素として、常に高い関心が寄せられているのです。 


2-1.カナダの「木質ペレット」の最大の輸出先が日本 

実は、カナダ国内では木質ペレットによる発電はそれほど盛んではありません。 

カナダは水資源が豊富なため、電力の約60%以上を水力発電で賄っており、木質バイオマスを主力電源にする必要がないからです。 

そのため、生産された木質ペレットの多くは輸出されており、最大の顧客が日本になります。 

下記グラフのとおり、日本は2021年から急激にカナダからの木質ペレットの輸入を増やしています。 


<図:カナダの木質ペレットの輸出量> 

引用:USDA|Canada: Wood Pellet Annual 2023 


2-2.日本はFIT制度で木質ペレットの輸入が急増している 

日本で木質ペレットの輸入量が増えている要因の一つとして、2012年に導入されたFIT制度(固定価格買取制度)が挙げられます。 

FIT制度とは再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定めた価格で電力会社が買い取る仕組みです。 

この制度の導入により、日本各地でバイオマス発電所の建設が進み、現在も多くの施設が稼働しています。 

下記グラフは木質バイオマス発電による稼働容量の推移です。 


<図:木質バイオマス発電の稼働容量の推移> 

参考:一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会|木質バイオマス発電を巡る情勢 


2015年から2023年の8年間で、木質バイオマス発電の稼働容量は約9倍に拡大しました。 

しかし、急激な需要増に対して、大型発電所を継続的に稼働させるだけの大量の木材を、国内だけで安定的かつ安価に調達することは困難でした。 

そのため、発電事業者は調達先を海外に求め、「輸入木質ペレット」の使用が大幅に増加。 

なかでもカナダ産の木質ペレットは品質が安定しており、供給量も多いため、多くの日本の発電所が燃料として採用しています。 

「再エネを増やす」目的で導入されたFIT制度は、結果として「海外(特にカナダ)からの木質ペレットの輸入急増」を招きました。 

日本のバイオマス発電の概要については下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

 
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3. 持続可能な資源利用を支えるカナダの森林管理体制と日本のルール

カナダ(生産側)と日本(消費側)の両国では、木質バイオマスの信頼性を確かなものにするため、「厳格な管理体制」と「国のルール」による整備が進められています。 

ここからは、両国がどのような取り組みを進めているのかを解説します。 


3-1.カナダ産の木質ペレットの供給構造 

カナダのペレット生産は、森林資源を余すことなく活用する「資源循環」の考え方に基づいています。 

一般的にペレット生産者が自ら伐採を行うことはありません。木質ペレットの原料は  

基本的には製材工場から出る端材や、林地残材、間伐材など、本来であれば利用されにくい木材を圧縮して加工したものが中心です。 

上記のような未利用木材を活用することで、森林資源を有効に使いながら燃料を供給する仕組みになっています。 

「カナダの木質ペレット」については下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 


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3-2.カナダの取り組み|森林保全と地域社会との共生 

カナダでは環境保全と社会的な公正を両立させるため、多角的な森林管理政策が導入されています。 


<カナダの取り組み 一例> 

取り組み項目 概要 
森林保護区域の管理 ブリティッシュ・コロンビア州およびその他の地域で、森林の伐採延期措置や法的保護区域の拡大が進められている。 
伐採企業に対する植林の義務化 伐採後の森林再生を確実にするため、企業に対し植林や生態系回復を義務づける政策がすでに導入されている。 
先住民族との連携強化 森林管理における先住民族の権利を尊重し、共同で保全計画を策定する取り組みが広がっている。 

具体的なカナダの対策は下記記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 


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3-3.日本の取り組み|「クリーンウッド法」と「FIT制度」による管理 

輸入側である日本においても、調達される木材の合法性と持続可能性を確実にするための枠組みが強化されています。 

2025年4月施行の法改正によって、

輸入事業者や国内メーカーに対して「輸入する木材が生産国の法律を守って伐採されたものであるか」を確認することが完全義務化されました。 

合法性が確認できない場合は、木材の譲渡や利用が認められません。 

仮に違反すると、刑事罰を含む厳しい処分が科せられる可能性があります。 

したがって、合法性を証明できない木材は「コンプライアンス上の重大リスク」となり、物理的に日本へ入ってくることが難しくなります。 


参考


3-3-2.FIT制度との連動 

クリーンウッド法の改正はバイオマス発電事業の根幹を支える「FIT(固定価格買取制度)」の運用にも大きな影響を与えています。 

バイオマス発電事業者がFIT認定を受けて電力を売電するためには、クリーンウッド法に基づく合法性の証明が必要になります。 

さらに第三者認証等を用いた厳格なトレーサビリティ(追跡可能性)の確保が必須条件となりました。 

もし事後的に違法性が発覚した場合、FIT認定の取り消しや売電収入の返還を求められるリスクがあります。 

つまり、出処の怪しい木質ペレットを利用することは、発電事業者にとって「事業の存続に関わる致命的なリスク」となり、たとえ安価であっても利用するデメリットの方が大きいです。 

上記のように日本の公的なルールによって、「信頼できる生産国の、正しく管理された資源だけが選ばれる仕組み」が整えられています。 


参考


4.日本企業に求められる「パートナー選別」の視点 

カナダと日本の法規制を遵守して木質バイオマス発電を行うためには、信頼できる事業者と安全かつ安定した取引を継続することが欠かせません。 

なかでも特に推奨されるのが、現地の業界団体である「カナダ木質ペレット協会(WPAC:Wood Pellet Association of Canada)に加盟する企業との取引です。 


4-1.カナダ木質ペレット協会(通称:WPAC)とは 

WPACは、カナダ最大の木質ペレット業界団体です。 

カナダの持続可能で世界をリードする木質ペレット産業の代弁者として、会員とともに責任ある再生可能なクリーンエネルギーを世界に供給することに取り組んでいます。 

カナダ全土に施設を有する50社以上の生産者および関連事業者を代表し、かつては廃棄物とみなされていた木質繊維を、ペレットの持つ変換力によって責任ある再生可能エネルギーへと生まれ変わらせています。 


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4-2.第三者認証による「客観的な証明」 

WPAC会員企業が取り扱う木質ペレットの信頼性を裏付けているのは、国際的に認められた森林管理の第三者認証制度を活用している点です。 

カナダには主に以下のような認証制度があり、会員企業は第三者認証を受けた木材を使用した木質ペレットのみを取り扱っています。 


<主要な第三者認証> 

認証団体 詳細 
SBP(Sustainable Biomass Program) バイオマス発電用燃料に特化した認証制度。炭素データや森林管理の適法性を厳しくチェックします 
公式サイト:https://sbp-cert.org/  
FSC(Forest Stewardship Council) 国際的な森林管理の認証を行う組織で、責任ある森林管理を普及させる目的で設立されています。 
カナダ公式サイト:https://ca.fsc.org/ca-en 
日本公式サイト:https://jp.fsc.org/jp-ja 
PEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification) 世界最大規模の森林認証プログラムの一つで、地域に根ざした森林管理認証を相互承認する仕組みを採用しています。 
公式サイト:https://www.pefc.org/ 
SFI(Sustainable Forestry Initiative) 北米中心の持続可能な森林管理認証を行う組織で、森林の環境保全や社会経済的利益の確保に取り組んでいます。 
SFI公式サイト:https://forests.org/ 

上記認証は、 

  • 森林が適切に管理されているか 
  • 木材の出自を追跡できるか(トレーサビリティ) 
  • 不正伐採や森林破壊を避けているか 

などを第三者が厳しく審査します。 

そのため、認証制度に基づく原料から生産された木質ペレットを調達することは、「出処不明の木材が紛れ込むリスク」を大幅に低減させることにつながります。 


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4-3.WPAC会員企業を選ぶべき理由 

近年批判されているような「森林破壊」などの問題に関与しないためには、「原料の出自が確認でき、持続可能性に責任を持つ事業者を選ぶこと」が重要です。 

WPAC会員企業は、 

  • 信頼できる原料サプライヤーからのみ調達する第三者認証制度に基づき、持続可能性および合法性が独立して検証されている木質原料を使用する 
  • 認証制度に基づき持続可能性を証明する 

という体制を整えている企業です。 

そのため、カナダから木質ペレットを輸入する際には、取引先がWPACに加盟しているかどうかを確認するだけでも、適正な管理体制の有無を判断する大きな手がかりになります。 


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参考


5.最後に 

木質バイオマスの持続可能性についてはさまざまな見解が存在しますが、イメージや感情論だけに流されるべきではありません。 

本記事で解説した「日加両国の厳格な法規制」や「第三者認証による裏付け」といった客観的な事実は、木質バイオマスエネルギーの信頼性を支える揺るぎない根拠となります。 

透明性の高いパートナー(WPAC会員企業など)を選び、曖昧な情報ではなく「数字と事実」に基づいて判断することが、長期にわたり安定して事業を継続していくポイントとなるでしょう。 


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